「数馬居合伝2」

北添数馬と申します。令和から江戸時代に行ってしまい、居合で江戸時代を生きていく物語です。

(33)続・お化け屋敷

両国のお化け屋敷で、不可解な事件が起きているという。
女性四人でお化け屋敷に行って、出てきたら、三人しかいないという。
似たようなことが、三回起きているという。行方不明事件である。
奉行所に届け出があったとのことで、鶴見源之丞が数馬に話を持ってきた。
「北添さん、お化け屋敷に一緒に行った仲です。ぜひご協力を」
「また、お化け屋敷に行くのですか、もう御免だなあ……」
「そこを曲げて!」
“曲げて”とは、武士が使う言葉で、無理を承知で頼むときに使う。風邪の時はみかんを持ってきてくれたから、そのご恩返しをするか、と、数馬は思い、
「分かりました」と承諾した。

お化け屋敷の営業時間外に鶴見と出向き、鶴見が、
「ここで行方不明になっている女がいる。中を改めたい」
と、お化け屋敷の座長に話した。座長は、
「どうぞ、ご案内します」
と、中を案内してくれた。
鶴見は念入りに調べていたようだが、特に変わった様子はない。物置小屋を見せてもらったが、お化けの道具が出てきただけである。
いろいろなお化けが陳列されていて、数馬は思わず「うわっ!」と言った。
座長が、
「これで全てです。物置小屋も見ていただきましたし、特に変わったことはないかと」
鶴見も、
「う~ん、何だろうな。特に変わったことはないな……」
と、鶴見はあまり納得していないといった感じで言った。
「北添さん、どう思う?」
「ううん。全て見せたと言っているけど、何か隠していますね」
「やっぱり北添さんもそう思うか」
「はい、一度見ただけではダメです。何度か見ないと……」
「そうだな。もう一度つきあってくれるかい?」
「またですか」
「そこを、曲げて!」

鶴見と数馬は、翌日もう一度、お化け屋敷に行った。
座長に中を見せてもらう。
「ほら、何もないでしょう」
と座長は言う。
しかし、造られた竹藪の奥から人の声が聞こえたような気がした。竹藪に通じる道に、御守り袋が落ちていた。
数人がそこに隠されているとなると、鶴見と数馬だけでは救出できない。
いったん出口まで行った。
「北添さん、私は奉行所に戻って、これを報告して、お奉行と作戦を練ります」
「そうしたほうがいいですね。二人だけでは……」

これは鶴見から聞いた話だが、その二日後に同心二十人で、行方不明者を全員救出したそうである。竹藪の奥に、もう一つ小屋があって、そこに女性たちが閉じ込められていたという。
奉行所では、座長を捕縛し、吟味をするという。