「数馬居合伝2」

北添数馬と申します。令和から江戸時代に行ってしまい、居合で江戸時代を生きていく物語です。

(25)西新井大師と草加せんべい

北添道場の門弟が、「西新井(にしあらい)大師に詣でて、草加(そうか)せんべいを食べませんか」と、提案してきた。
数馬にとってはとても懐かしい。まだ幼稚園の頃、西新井の団地に住んでいたのだ。休日になると、父が西新井大師に連れていってくれた。

今回の参加も、門弟の約半数である。全員が揃うのは、新年の餅つきぐらいである。
稽古はほぼ毎日やっているが、これも全員が揃うのは稀である。週に一度しか来られない門弟が来る日は、誰かが来なくて、といった具合である。
なので、北添道場は「掲示板」がある。全員に周知したいことはそこに貼り出す。「聞いていなかった」ということが無いように。

さて、一行は、荒川を渡し舟で渡り、まず西新井大師を目指す。
「みなさん、西新井大師の名物といえば、何か分かります?」と数馬。
「?」
「草団子です。美味しいですよ」
さて、西新井大師に着いた。山門のすぐそばに団子屋がある。
店頭で実演販売をしている。手で丸めるのではなく、親指と人差し指で輪っかを作り、そこから、にゅっと、団子ができるのである。次から次へと団子が出来る。面白い。
お風呂で空気を入れた状態でタオルを浮かべ、手で沈めるとてるてる坊主のようになる。それと似ている。
門弟たちも、次から次へとできる団子を見て、飽きないようだ。
店先に床几台(しょうぎだい)があり、食べられるようだが、お参りしてから食べようとなった。

香炉の煙を浴び、本堂で手を合わせる。
門弟がおみくじを引く。
「大吉だ!」「凶だ…」「拙者は小吉です」
“塩地蔵”を撫でる。お地蔵の全身が塩で覆われている。いぼ取りにいいらしい。みんなが触って撫でるために、お地蔵の表情が分からない。
門弟たちが塩地蔵に触る。そして手を舐める。
「先生、しょっぱいです」
と言う。

さて、草団子を食べる。注文して、床几台に座って食べる。
「美味しいですね」
「来て良かった!」
「団子、お土産に買っていこう」
門弟たちの評判は上々だ。案内役として、嬉しい。

次に「草加せんべい」である。
草加まで歩いて行く。令和の時代なら東武電車ですぐなのだが。

草加に着くと、やはり草加せんべいの店がある。何軒かあるのだが、食べたいので、床几台があるせんべい屋さんに立ち寄る。
床几台に腰掛け、
「私は海苔付き」「拙者は、ねぎみそ」「それがしは醤油」
などと、注文する。
数馬がご馳走した。
門弟一同「先生、ありがとうございます!!」

焼きたてのおせんべいは美味しい。焼いたせんべいに醤油が塗られるようになったのは、幕末の頃からである。

数馬はきょう参加しなかった門弟たちに草加せんべいをお土産に買うことにした。帰りの道中で粉々に割れなければよいが……


西新井大師 東京都足立区西新井1-15-1

草団子