「数馬居合伝2」

北添数馬と申します。令和から江戸時代に行ってしまい、居合で江戸時代を生きていく物語です。

(14)ものもらい

今年も暑い夏がやってきた。
令和では当たり前のように35℃以上の「猛暑日」が連続するが、江戸時代、猛暑日というのは珍しかった。
ただ、暑いことには変わりなく、すだれと打ち水が効果的であった。あと風鈴。

北添道場も暑い。
武道館にあるような巨大扇風機もない。
稽古をしていると、汗が顔を伝って滴り落ちる。
汗を拭くのに手拭を使うのだが…
数馬は失敗をやらかした。

ものもらいができてしまったのである。
小石川養生所に行った。
「これはものもらいですね」と榊原医師。
そして、「何か不潔なものを目に入れた覚えはありませんか?」と聞かれた。
そういえば…
何日も洗っていない手拭いで目を擦っていたなあ。
それを話すと、
「それが原因です。炎症を止める薬を出します。それで一週間ほど様子を見てください。ダメでしたら、また違う薬を出します。手も清潔にしてください」

手も清潔にしてくださいといえば…
刀の柄、絶対に雑菌だらけである。刀身は手入れをしても、握る部分を掃除するというのは聞いたことがない。みなさんどうしているのか。
アルコールがいちばんよいと思う。江戸時代の消毒といえば、焼酎を口に含んで吹きかけるシーンがあるが、あれは良くないと思うのだが……。

道場の門弟には、いつも清潔なものを使うことと、注意しているのに、手拭が原因でものもらいになったことは、さすがに誰にも言えない。

ものもらいの原因となった手拭(筆者蔵)